Posts By satosixx

2017/12/06 熊谷守一展

なかなか回顧展を見ることができなかった。今回没後40年ということで竹橋の東京国立近代美術館で熊谷守一展が企画されたようだ。だいぶ前に豊島区の熊谷守一美術館に仕事でうかがったのが熊谷氏の画にふれたきっかけ。その時に「夕暮れ」という題名の太陽を描いた画を見たとき、光に照らされた対象を描くのではなく、光源自体を画にするという発想に驚いたのでした。
画学生だった頃の作品からじっくり。独自のスタイルを身につけて「熊谷守一」になっていく転換点的な画や独自の表現を身につけた後の作品まで全部で200点以上。平日の午後ということもあって人も思ったよりも少なくてのんびり自分のペースで鑑賞できた。すごいと思ったのはやはり今回も70歳からの作品群。80歳以降の作品の色使いのビビッドさ。画題の選び方と組み合わせの感覚。70代の中盤で身体の具合が良くなくなって、ほとんどの時間を庭で植物や蝶や蟻や猫を観察しながら暮らしていたのだという。そこにあって当たり前ともいえる身近な事物の中に自分なりの視点で面白がれることを見つけて、それを卓越した観察眼と独自の表現テクニックで作品として昇華させることができるんだ。あんな風に何事も自分なりに面白がれる好奇心をいつまでも持ち続けられたら素晴らしいこと。

東京国立近代美術館のエントランス付近に並べられていた椅子に陽が差していた。

2017/12/03 N響定期

晴天。午後、明治神宮前駅から代々木公園の紅葉した木々を見ながらNHKホールまで歩く。オーチャードホールでのN響定期には行ったことがあるけれど、本拠地で聴くのは初めて。そうか、ここで紅白歌合戦やっているんだ(何年も見てないけれど)。だからパイプオルガンが会場に向かって右の壁に設置されてるのか。今回のプログラムはパーヴォ・ヤルヴィさんの指揮ではなくてシャルル・デュトワさんで全曲モーリス・ラヴェルのプログラム。「古風なメヌエット」で始まって、組曲「クープランの墓」、「左手のためのピアノ協奏曲」のあと、15分の休憩。「道化師の朝の歌」、「スペイン狂詩曲」のあとは「ボレロ」で〆。今回一番聴いてみたかったのは「左手のためのピアノ協奏曲」。ピアノはピエール・ロラン・エマールさん。題名の通りピアノは全て左手のみで演奏する。第一次世界大戦で右手を失ったウィーンのパウル・ウィトゲンシュタインという人の依頼で作られた曲。非常にエモーショナルな曲で、本当に左手しか使わない演奏でしかも協奏曲なんて初めての体験。非常に驚いたし、ものすごいカッコよさ。ラストの「ボレロ」はなんというかすっきりしてて端正な印象を受けた。2種類のメロディを繰り返すという曲が指揮者次第でこんなに印象が違うものになるのかと。小太鼓の黒田英実さん、ブラボーでした。

帰りにホールを出ると並木道が「青の洞窟」と銘打ったイルミネーションで飾られていて驚いた。なんというか、非常にケミカルな色合いの青色LED。インパクトはあると思うけど、風情は..どうだろう。デジカメで撮ると発色が鮮やかすぎて色が破綻している。あと4週間で今年が終わってしまうのが信じられない。

2017/11 ジムメモ

2017/11/24 ゴッホ展

午後に時間が作れた。怖い絵展のすごい行列を横目にゴッホ展を観に都美館へ。今回の展示のテーマはゴッホが受けた日本からの影響という視点。ゴッホは浮世絵や日本に関する文献を収集して、独自の日本観を持っていたようだ。去年アムステルダムに行った時にゴッホ美術館で見た作品が多数あるのはわかっていたのだけれど、そういう視点での展示も面白いだろうと。それに展示のテーマがどうであれ、ゴッホの絵なら何回観てもいい。
ゴッホが影響を受けたであろう広重の東海道五十三次の浮世絵も展示されていた。刷りも保存状態も良好。浮世絵はニトリ蔵の作品が多くて意外の思い。目玉であろう渓斎英泉の「雲龍打掛の花魁」とそれをゴッホが模写した作品の対比も非常に興味深かった。どこに力点を置いて描いて、どこを省略したのかを観ることができた。そしてそれはなぜなのだろうかと自分なりに仮説を立てて楽しむことができる。展示の後半はゴッホの死後、主治医(とその家族)のもとを訪れた日本人の芳名録関連の展示が多数。その辺りはちょっと省略してさらっと見るにとどめた。「渓谷(レ・ペイルレ)」や「ポプラ林の中の二人」も初めて見る作品だったし、アルル時代に描かれた「寝室」をもう一度観れてよかった。

この木は何かに似てると思ってしばらく考えた。そうか、リトル・ミイの髪型か。上野公園を通って上野駅に向かう途中で。

2017/11/14 運慶展

御徒町のアーンドラキッチンで昼を食べてから、行きたかった運慶展を観に東京国立博物館へ。エントランスに着いてみると入場まで30分待ちとの表示。雨が降っている中で並ぶのは嫌なので帰ろうかと思ったけど、会期中に来られるのは今日しかないので腹を決める。ちょうど30分くらいの待ちだったと思うけど、想像していたよりは短く感じた。係員さんによると今日は空いてる方とのこと。そんな感じなので中も当然混雑。初めてオーディオガイドを借りるのに行列をした。いつもならその辺で心が萎えてくるのだが、今回は違った。中はほぼ国宝と重要文化財ばかりと言っていい内容。運慶の父、康慶作の仏像から始まる展示。運慶の四天王の彫刻の迫力の凄いこと、そして如来の表情の穏やかなこと。有名仏師の作った仏像をちょっと観に行ってみるかという認識だったけど、これはもはや彫刻展だと思った。15世紀にミケランジェロがキリスト教に題材をとって大理石に鑿を振るったように、12~13世紀の平安時代から鎌倉時代の日本で運慶は木に鑿を振るっていた。そして800年以上前の運慶が彫った多数の木彫がいい状態で現存しているのは奇跡と言っていいのではないだろうか。今回は博物館での展示。本来お寺に安置してある状態だと、上から下まで適切にライトが当てられた状態で、しかもこんなに近くで細部まで鑑賞することは不可能だろう。今回は横にも裏にも回ってじっくり観ることができる。お寺の雰囲気を楽しみながら拝観するのもいいけれど、こういう企画展でいちどきに会する運慶の彫刻をじっくり観察できるのは稀有な機会。オーディオガイドの解説をじっくり聞いて、解説文をしっかり読んで、お気に入りの仏像を何回も見直したりしながら結構長居してしまった。人いきれの中にいたせいでちょっと疲れたけど、想像をはるかに超えるかっこよさ。疲れ気味だったけど行ってよかった。それにしても評判通りの凄い展示だった。これは混むわけだ。しかしこんなに国宝と重文ばかりの展示をよくぞ実現させてくれたものだと思う。こちらからは見えない苦労が多々あったことだろう。実現させてくれた関係者の皆さんの熱意に頭が下がる。

帰り際に。東京国立博物館の前の噴水の池の中に寛永寺の山門、文殊楼が再現されていて驚いた。開催中の数寄フェスの大巻伸嗣さんの作品だそうだ。雨降ってたけど、みんな楽しそうに写真を撮っていた。

2017/11/01 ブラック・ダイク・バンド

仕事が終わって急いで池袋の東京芸術劇場へ。去年のブラックダイクバンドの評判がとても高かったので今年来日することがあれば行ってみたいと思っていたのでした。イギリスの実力ナンバーワンのブラスバンドとのこと。指揮はニコラス・チャイルズさん。演奏が始まってまず感じたのはオーケストラの金管の音と比べて非常に柔らかいと感じたこと。使用する楽器もオーケストラで用いる金管楽器とは違うようだ。前半のプログラムは「クイーンズバリー」で始まって、映画「ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎のテーマ」、「ジェームズ・ボンド/007組曲」、「トレボーン湾のほとりで」、「メトロポリス1927」のあと20分間の休憩。後半は「スルー・ザ・フレイムス」のあとはソリストショーケース「アニー・ローリー」「オーバー・ザ・レインボー」「ブラヴーラ」3曲それぞれソリストたちの超絶技巧を堪能できた。最後はビッグ・バンド・セットで「オーパス・ワン」「アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー・ユー」「マック・ザ・ナイフ」「トゥ・ボールドリー・ゴー」。ビッグ・バンド・セットでの演奏は大盛り上がりだった。アンコールはバッハの「トッカータ」と「ハイランド・キャッスル」。バッハをブラスバンドで聴いたのは初めてだったけど、アレンジが斬新で非常にカッコよかった。ブラスバンドがこんなにカッコいいなんて想像もしていなかった。世の中には自分が知らないすごいものがまだまだたくさんあるのだよなぁとしみじみ。ラストの曲もよかったけど、おじさんは007のテーマにしびれた。また来年来てくれないかな。

2017/10 ジムメモ

2017/10/29 ケルン放送交響楽団

台風の影響で朝から強い雨脚。午後からオペラシティのコンサートホールへ。佐渡裕氏指揮のケルン放送交響楽団の日本ツアー最終日。佐渡氏指揮の音楽を聴いてみたくて、かなり前からチケットを取って楽しみにしていた。プログラムはワーグナー「ジークフリート牧歌」、シューベルト:交響曲第7番ロ短調D.759「未完成」、ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調op.67「運命」。未完成は初めて生の演奏を聴いた。とても柔らかくて繊細な印象。未完成という言葉はシューベルトがつけた言葉ではなく、後々ついたもの。未完成というテーマで作られた曲ではない。そうとわかっていてもインパクトのある演奏を思い浮かべがちだが、いい意味で期待を裏切られた。あえて言うならどこか儚げで哀しい曲に感じられた。20分間の休憩の後は「運命」。こちらは今まで聴いた中で一番熱い演奏だった。特に第4楽章の最後の全力の疾走感。佐渡氏がプログラムの解説に非常に興味深いことを書いていた。運命の楽譜はなんと八分休符から始まるのだという。指揮者は休符に向かって腕を振り下ろす。振り下ろした瞬間は音が鳴らなくて、「ン(休み)、ジャジャジャーン」なのだそうだ。これはCDで聴いていると絶対分からないだろう。生の演奏を目にして初めて感じられるサプライズだと思う。今回のプログラム、「未完成」が柔、「運命」は剛といったところか。アンコールはモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲。

初台駅を出て、オペラシティのコンサートホール、タケミツメモリアルに続くアプローチ。ここの空間は本当に気持ちがいい。

2017/10/22 ヴラマンク展

朝から強い雨。選挙に行ってから中央道に乗って甲府昭和で降りる。下道を北に4kmくらい走ったところに山梨県立美術館がある。そこで9/2からやっているヴラマンク展が気になっていた。クライミングで雨敗退した時にでも行こうかと思っていたのだけど、雨が多かったりなんやかんやで機会がなくて最終日の今日になってしまった。ここはミレーのコレクションでも有名で常設展示をやっている。どっちから見ようかと思ったけど、企画展のヴラマンク展から。ヴラマンクといえば強烈な色使いと堅固なアングルの風景画というイメージだった。それが大好きだったのだけど、今回初めて静物画も見ることができた。セザンヌから影響を受けた初期の作品も初めて見る。補色の扱い方が独特だと感じる。色のトーンでそう感じるのか、タッチのせいなのか。1925年から1955年の全盛期の風景を描いた作品も原色に近い色を多用しているのだけれど、なぜか陰鬱なイメージを受ける。ゴッホとかユトリロの絵から受ける印象と少し似ているのかもしれない。空の描き方でそう感じるのだろうか。色とかコントラストの対比だけでなく、地上と空自体を対比させているようにも感じられたし、昼の中にも夜の雰囲気を感じる。独特な印象を与える不思議な魅力を湛えた画たち。晩年の作品はリトグラフだった。油彩ほど強烈なインパクトはないけれど、彼の色彩感覚のエッセンスが凝縮していると思う。ゆっくり見終わった頃にはお昼時だったので併設のレストランで食事をして、今度はミレーの常設展示室へ。種をまく人の実物を初めて観れた。この展示室はミレーの作品だけではなくて、19世紀の同時代のフランス画家たちの作品も展示されていて見ごたえのある内容。それからもう一つの企画展示室へ。こちらはこの美術館がコレクションしている作品を、あるテーマに沿って展示してみるという趣向のようだ。今回のテーマは「たべる」と「えがく」の不思議な関係、ということのようだ。主に山梨県にゆかりのある作家の作品が多く展示されていた。今まで知らなかった作家の絵もたくさん見れた。日本画、洋画、エッチング、コラージュとバラエティに富んだ展示内容。中にミレーのエッチングもあったりでさらっと流すつもりが結構じっくり楽しんでしまった。なんだかんだでお昼をはさんで半日以上美術館で楽しんだ。午後はホールでチェロの演奏会をやっていたり、子供の絵の展覧会をやっていたようで元気な子供の声がホールに響いていたり。東京の美術館の雰囲気とはちょっと違っていて興味深い。柔らかい雰囲気の美術館。コレクション展は年に4回展示替えをするようなのでまた来たい。

終日強い雨。晴れてたら青い空にレンガの色が映えて素敵なんだろうなと思った。行き帰りの高速道路は50km規制。水煙がすごくて運転はちょっと緊張した。

2017/10/18 立川志らく落語大全集 秋

国立演芸場。前回のシネマ落語の「E.T」が面白かったので「タイタニック」はどんな感じなのだろうと。開口一番は立川志ら松「大安売り」で始まる。それから立川志らく「粗忽の使者」「抜け雀」の後、仲入り。そして「タイタニック」。粗忽の使者と抜け雀の登場人物を登場させて江戸の人情噺に仕立てたタイタニック。タイタニックの時代設定と登場人物の設定が斬新。そうくるかと。新しい面白さに驚いた。それにしても噺を三つリンクさせるっていう手法はいつもながら感心する。例によって笑いっぱなし。

落語大全集のリーフレット。志らく氏がつづる解説を読むのが毎回楽しみ。